やる気を引き出す「褒め方」「叱り方」

勉強やスポーツ、その他さまざまなことについて「やる気」というものは非常に大切な要素になります。とはいえ自分で「やる気」を起こすのは非常に難しいものです。これは子どもだけでなく、大人もそうだといえます。なぜなら「やる気」というものは勝手に起きるものではなく興味や得手不得手、環境、場所、人など様々な要素に左右されるからです。興味がないことがらについて「やる気を出しなさい!」などと言われても逆効果なのは明白です。

しかし、逆に言えば自分から起こすのが難しいときも、外的要素つまり親や教師など他人によって「やる気」を引き出すことは可能だということになります。

「褒める」ことを効果的に使う

ここで、褒めることについての例を見てみましょう。

パターン1

子どもが難しい問題を解いている。しばらくわからず苦戦しながらも何とか正解できた。

×褒め方1「難しい問題をよく正解したね!すごい!」

○褒め方2「すごくよく考えていたね。あきらめずに頑張って尊敬するよ。努力している姿をみると私もうれしい気持ちになるよ。」

一般的には「褒め方1」を選択しやすいのではないでしょうか。なぜなら、「問題を正解した」という「結果」はわかりやすく、褒めやすい要素になるからです。また、「結果」というものは「過程」を見なくてもわかるので褒める側にとって楽なのです。例えば、野球などのスポーツの勝敗は途中を見なくてもすぐに結果だけをみることができますね。しかし、どの選手がどんないいプレーをしたのかは試合をよく見ていないとわかりません。

「褒め方1」では、褒められた側はもちろんうれしい気持ちになり、笑顔も出ることでしょう。しかし、褒められた要因としては「できたから」ということになります。つまり、「できること」が大事であり、「できない」ことはダメなことと認識してしまうことになります。「結果」だけを褒め続けると褒められた側は「結果」のみを重視するようになってしまいます。

「結果」のみを重視するようになるとなぜいけないのか。それは、「結果」が出ることばかりを選んでしまいがちになるからです。そうなると「結果」が出にくそうな難しい問題や新しく習う単元に意欲が出なくなる可能性があります。

「褒め方2」を見てみましょう。特に結果は褒めておらず、「努力していたこと」と「あきらめずにチャレンジしたこと」について褒めています。このように「過程」を褒めることで例えできなくても「チャレンジする」ということに重きを置くようになります。そうすれば難しい問題が出てきたときには目が輝き、あきらめず粘り強く考えることができるようになることでしょう。

「褒め方2」ではさらに、「相手を認める」ということと「私がうれしい」という気持ちを伝えています。認められることと、自分の信頼する人がうれしい気持ちになることで、自分も役に立っているんだという自己肯定感につながります。

パターン2

学校で書いた絵を持って帰ってきて見せてきたとき

△褒め方1「すごく上手だね!○○○は絵の天才だね!」
○褒め方2「たくさんの色を使ったんだね。この花が大きく書かれていて私はすきだな。○○○はどんなところを工夫したの?」

「褒め方1」が決して悪いわけではありませんが、少し漠然としていています。また、「すごい」や「上手」などの大人の評価を押しつけてしまうことになります。

「褒め方2」では、たくさんの色を使ったという「みたままの事実」、大きく書かれている花が好きだという「私の気持ち」また、絵について興味をもって「質問」をしています。このような声かけをすることで、子どもはよく見てくれているんだという気持ちになり、絵を描くことを頑張りたいと思うきっかけになります。

上手なしかり方

褒めることはとても大切ですが、ときには叱ることも大切です。しかし、叱ることは子どもに罰を与えてコントロールをするためにするものではありません。社会生活に必要な知識や習慣を身につけるために叱るのであって、大人の感情の発散のために叱るのはよくありません。

パターン3

子どもがテストで良くない点を取ってきたとき

×叱り方1「どうしてこんな簡単な問題を間違えたの。だめじゃない!」「次は80点以上とらないとスマホは取り上げるよ!」
○叱り方2「○○○は今回の点数どう思っているの?」「100点満点でどのくらい頑張ったかな?」 「じゃあ、次はどうしたらいいかな?」

「叱り方1」では単に相手を非難し脅しによってコントロールしようとしています。仮にこれで良い点数をとったとしてもそれは向上心から来るものではなく、恐怖や自分におこるデメリットを回避するために行ったに過ぎません。これでは一時的にはよかったとしても、何かに向かって目標を立てて実行するというスキルはみにつかないでしょう。勉強でいい点を取ったほうがもちろん良いでしょう。しかし、それ以上に自分で計画を立て実行するスキルを身につけていくことを大切にしたいです。

「叱り方2」では叱ってはいませんが叱ることは「子どもの行動をより良い方向に正す」という目的は同じです。まず「子どもがどう思うかを聞き」、どの程度頑張れたかを「自分で評価して」もらっています。どの程度頑張ったかによって対応は違ってくるかと思いますが、「次はどのようにするか」という計画を一緒に立ててみて下さい。そしてそれをサポートしてあげるのが望ましいです。

しかし、子どもが素直に話を聞いてくれれば良いですが小学校高学年から中学生に入る思春期ではなかなか親の話を聞いてくれないものです。いつもテレビやゲームばかりしていると「勉強しなさい!」と言いたくもなるものですね。なかなか素直に聞いてくれない子供にはやる気を引き出す「コーチング」がおすすめです。

正論では子どもには響かない

例えばいつもは得意で良い点を取っている科目が、今回はよくない、白紙で出している部分もある。こんなときは「なんでこんな点数なの?」とか「なんで白紙で出すの真面目にやりなさい」などと言ってしまいがちです。しかし、子どもも何回もテストを受けてきて、いい点数を取りたいとは思っているし、白紙で出すのもよくないなんてことはわかっていることです。わかりきっていることを指摘されるとますます心を閉ざしてしまいます。

こんなときは1対1できちんと話す時間を作り、テストの点数よりも「何かあったの?なんでも聞くから理由を話してほしい」と穏やかに質問をしてみてください。じっくり待ってあげれば「今回は苦手な単元だった」とか「課題がおわっていなくて勉強時間がなかった」とか「友達関係であまりうまくいかなくて勉強どころではなかった」とか理由を答えてくれるでしょう。理由はともかく大切なのは「相手に寄り添う姿勢を見せる」というところです。そして「話してくれてよかった。〇〇〇ならこんなテストで1,2回失敗してもすぐに取り戻せるよ」と感謝の気持ち伝え、大丈夫だよと安心させてあげてください。徹底的に「私はあなたの味方だ」というメッセージを送りましょう。そうすれば、子どもは自然と「ごめんなさい。次はがんばろう」という気持ちになれるものです。

最強のサポーターになろう

子どもは成長するにつれて様々なことを学び、考え、行動します。いつまでも子ども扱いをせずに一人の大人として対応しましょう。子どもをずっと管理し1から10まで行動を指示するような過干渉はよくありませんし、逆に全くかかわらず放任しすぎるのもよくありません。適切な距離を保ちながら、子どもに対し興味を持ち、応援する、最強のサポーターとなりましょう。子どもはおのずとやるべきことを理解し実行できるようになるのです。