語彙力おばけになろう ~読解力をつける~

読解力とは、文章を正しく読む力です。文章を正しく読むことは、学業においてすべての教科に大きな影響が出ます。それだけでなく、コミュニケーションの中で、相手の置かれている状況や感情、伝えたいことを把握し、理解する力でもあり、日常の様々なシーンにおいて必要されています。この読解力につながる大きな要素として「語彙力」があります。

語彙力は「知っている言葉の量」ということですが、これをみにつけるためにはどのようにすればよいのでしょうか。いくつかの効果的な方法を紹介します。

■活字に触れる機会を増やす
■音読をする
■四字熟語・慣用句・ことわざ

それでは、各項目について具体例を示しつつ解説します。

活字に触れる機会を増やす

国立教育政策研究所の報告書では、読解力と本・新聞の関係が以下のように説明されています。

読書を肯定的にとらえる生徒や本を読む頻度が高い生徒の方が、読解力の得点が高い。中でも、フィクション、ノンフィクション、新聞をよく読む生徒の読解力の得点が高い。

簡単に言うと本や新聞を読むと読解力は高まるということですね。読書をすることは当然、たくさんの言葉に触れることになりますので、手っ取り早く語彙力を増やすことができます。さらに、たくさんのジャンルを読むと一段上の読解力をみにつけることができます。読書の効果は、すでに周知されていますが実際には「なかなか読書の習慣がつかなくて・・・」というご相談をよく受けます。読書の習慣をつける具体的な方法は次のようなものがあります。

①図書館や本屋に家族で行く習慣をつける

家での読書が難しいという人には図書館に行くのがおすすめです。図書館では本を読むということだけに集中できますから、その環境にいるだけでも本になじむことができます。また、周りの人が集中しているので、その影響を受けて自分も集中しやすくなります。
最近では、本屋の中で読書しやすいような場所も増えてきています。そういったお気に入りの本屋を見つけて、通ってはいかがでしょうか?気に入った本や新しく分野に興味がわくような本に出合える確率も高まります。とはいえ、読書の習慣がない子どもに一人で行きなさいというのも難しいでしょうから、ここは、ぜひ家族全員で行く習慣をつけてみてください。どんな本を読んだかを話し合ったり、同じ本を読んでみたりすれば家族のコミュニケーションにもつながり、話し合うことでより一層読書の効果が高まります。継続していけば、本の面白さに気づくことができ、自ら本を手に取るようになれるでしょう。

②新聞を購読し、興味のある記事をみつけて要約し、意見を出し合う

「新聞も読むと良い」これもやはり周知のことと思いますが実際には読んでいる子どもは少数ではないでしょうか。ただ読むだけでも知識や語彙力の幅が広がりますが、興味のありそうな記事を子どもに選ばせて、記事をかんたんに要約させてみてください。「何が書いてあったか」「この記事のもっとも言いたいことは何か」「それについてどう思うか」これらを中心にまとめてもらいます。しばらくはうまくいかないでしょうが、それでも十分です。読んだ後にアウトプットする機会があるというだけでも本気で読んで考えることにつながります。まったくあてずっぽうのことを言っても、決して怒らずに褒めてあげることで楽しいという気持ちになり、継続するモチベーションにもなります。
 中学受験を考えている小5・小6の子どもには大人の新聞でもよいですが、「子ども新聞」はふりがなもあり、わかりやすい記事になっているのでまずは子ども新聞からはじめるとよいでしょう。

③マンガも語彙力がみにつく

「うちの子、本は読まないんですがマンガばっかり読んでいるんですよ」と、このようなお話をよく伺います。確かに読解力という点ではあまり効果がないという意見も多く見ますが、マンガを読み込めばかなりの語彙力がみにつきます。子供では選ばないようなジャンルのマンガを目につくところにそっと置いておくことで自分から読むこともあります。また、歴史のマンガなどは最高の教科書といえます。いろいろな世界観を体験することは国語だけでなく、知識の幅も広がり良いことずくめです。

さらに、マンガを活用する方法があります。マンガを1冊読んだあとに、どんなマンガだったか「あらすじ」を話してもらうのです。保護者はその話の聞き手になり、「誰が」「どうして」「なぜ」「いつ」「どこで」などで質問をします。話の内容を説明するというのは「要約」する勉強になります。なかなか取り組みづらい学習を、興味のあることでできるのは一石二鳥ですね。

音読をする

「音読をさせることは今の日本人には大切」と言われています。声に出す必要がないため、現代のネット社会では文字だけのやり取りが問題視されています。

音読をするとなぜ良いのでしょうか。それは、耳からどんどんいい言葉が入り、脳に蓄積されるからです。さて、考えてみてください。人間の赤ちゃんは、生まれたそのときは言葉は全く持っていない真っ白な状態です。そこから、お父さんお母さんを含め、たくさんの人から言葉を聞き、話していくことで自分の脳に「言葉」が蓄積していくのです。そこには「耳」から「脳」に入っていくというメカニズムがあるからです。これは何も赤ちゃんだけではなく、小学生になっても中学生になっても大人になっても変わらないことなのです。ですから、新しい言葉を蓄積するには自分で「音読」することはとても効果的です。

音読する本は何でもよいでしょう。小学校高学年でも絵本で名作を音読させることでも十分な意味があります。

四字熟語・慣用句・ことわざ

「危機一髪」「言語道断」といった四字熟語や、「猫の手も借りたい」などの慣用句は日本人の教養の基本といえます。このような言葉を覚えるには、四字熟語や慣用句をまとめた本を1冊読んで、一気に覚えるのがおすすめです。ただ覚えるだけでなく、その言葉の由来なども書いてるので、一緒に読めば楽しく、忘れにくくなります。

さらに、家族でクイズ形式にして楽しく覚えてはいかがでしょうか?出題者が本を片手にクイズを出すのです。

子ども「自分の田んぼだけに水を引き入れることから、自分勝手にふるまうという四字熟語は?」

父「うーんなんだろう?傍若無人?」

子ども「ぶぶー、答えは我田引水でしたー」

このようにすれば楽しく言葉を覚えることができるのではないでしょうか。また、覚えたことわざや、慣用句、四字熟語を生活の中で積極的に使うようにするとさらに効果アップです。保護者が積極的に使うことも大切です。子どものしゃべった言葉を、違う言葉で置き換えていってあげてください。

子ども「今日ね、学校から帰るときに体操服を持って帰る日だったのに忘れてて、校門を出るところで気づいて取りに戻ったんよ、あぶなかったー」

母「それは危なかったねえ。まさに危機一髪だ」

子ども「ききいっぱつ?」

母「ほんのわずかな違いで危険なことになるということだよ」

このように生活のなかで使っていくことは無理なく頭に入っていきますので、オススメです。

まとめ

語彙力はすぐに身につくものではありませんから、「活字に触れる機会を増やす」「音読をする」ことを積極的にしてみましょう。急に難しい本を読んだり、漬物石の代わりになるような厚い本から入ってしまうとむしろ活字離れをおこしてしまうかもしれません。なるべく興味がある、面白い本や雑誌などから読んでいきましょう。四字熟語などを覚えるときも「楽しく」覚えるような取り組みをしてみてください。楽しく学習することで、ドーパミンが分泌されることの効果で、記憶力や集中力が高まります。 また、学習も継続しやすくなることでしょう。