数学(算数)が苦手な子どもの特徴とその対応

算数は生活の中にあふれています。物事を効率的に考え、ものの見方が多角的になるなど、生きていくうえで大切な能力が身に付く単元でもあります。日常生活の中で、楽しみながら取り組んでいくことが大切ですが、取り組みの差で得手不得手がはっきりとしやすい教科の一つでもあります。今回は苦手になる理由とその対応についてまとめます。

前学年の内容が理解できていない

例えば、小学3年生で13×6のようなかけ算を学習します。この計算を暗算ができるくらいになっていないと4年生のわり算で苦労することになります。805÷13をひっ算でやる際にはかけ算が必要になりますが、いちいちかけ算のひっ算を書いていては時間がかかってしまいます。
中学生では中1の比例の分野で関数をきちんと理解できていないと、中2の1次関数や中3の2次関数の分野がさっぱりわからなくなります。

このように、前学年の内容を抑えていないと次の単元に進んでも理解が進まず、苦手意識がついてしまいます。数学は積み重ねの単元と言われますが、このように前学年の内容をある程度理解しているのが前提になっているからです。

この場合の対応はシンプルです。わかっていない単元まで戻って学習をし直すことです
まずは、どの単元かわかっていないのかをチェック1週間のうちに復習をする時間を決めて、必ずその時間だけは他のことはしないようにしてください。最初のうちは自分だけでは難しいでしょうから、保護者の方が一緒についておこないましょう。軌道に乗ってくれば自分だけでもできるようになっていくでしょう。基本をひたすら繰り返すことが大切です。


しかし、やることはわかっていても家庭では『時間が取れない・適切なテキストがない・親子での指導が難しい』というようなこともあると思います。その場合はやはり塾を頼るのが手っ取り早いです。夏期講習や冬期講習などでは復習をするチャンスです。集団指導では今までの復習を通して行うことが多いですが、個別指導は時間は短い傾向にあるので、しっかり要望を伝えておきましょう。「〇〇〇が弱いので見てください」といえば対応してもらえるはずです。

計算はできるが文章問題が苦手

塾を検討されている方で多いご相談です。計算は繰り返せば必ずできるようになる分野ですが、文章問題は色々なパターンがあり、計算とは必要とされている能力が異なっています。その能力とは、イメージ化能力です。文章を読んで、何がどうなっているか頭でイメージをするのです。その映像がはっきりと頭の中で作ることができれば、自然と計算式は作れます。そこではじめて計算の能力が必要になってくるということになります。もし、何度文章を読んでもわからないという場合は文章をイメージする能力を鍛える必要があります。

では、イメージ化能力が苦手な子どもはどうすればよいか。それは実物を見せることです。お金の計算であれば、実際のお金や紙で作ったお金などを準備してやり取りをしてください。わり算の計算であれば、絵に書いて何をしようとしているのかを理解してください。そして、それを自分でも書けるようにマネをさせてください。イメージ化できないということは、その経験が足りないということになりますので、手間を惜しまず実物を見せてあげてください。その手間は後で何倍ものリターンになって返ってくるはずです。

しかし、中学生から多い抽象的な問題の場合は、実物を見せるというわけにはいかない場合が多いでしょう。その際は、手順を細分化し、マニュアル化してあげることです。例えば、方程式の文章問題では①文章を読んで何を聞かれているか考える ②何を文字で置き換えるか単位をつけて書く ③文字を使って等しい量となる式を作る ④方程式を解く という手順になります。文字で書くと難しそうですが、声掛けをして1つ1つを細かく分けていくと理解して解けることが多いです。そして、やはりマネをして自分でできるかどうかを試させてください。わからなかった問題は自分で解けるかどうかを試し、3回繰り返すことが大切です。

難しそうな問題はすぐにあきらめてしまう

難しい問題をすぐにあきらめてしまう子どもは、きちんと文章を読めていないということがあります。その場合は、文章を音読してみましょう。それだけで解けるようになることもあります。

また、思考力が鍛えられていないことも挙げられます。思考力とは「あーでもない、こうでもない」と考えて自分の作戦で問題を解こうとする力です。思考力が鍛えられてくると難しい問題になると顔つきが変わり、ものすごく集中力を発揮するようになっていきます。これは数学だけでなく、社会に出ても役立つ力になることでしょう。

では、思考力を鍛えるにはどのようにすればよいか。それは、普段から考える癖をつけ、繰り返し繰り返し問題に挑んでいく習慣をつけることです。一朝一夕でみにつくものではありません。教科書などのプリント教材以外にもパズルやブロック、ナンバープレート・ボードゲーム・カードゲーム・囲碁や将棋といった頭を使う遊びにもチャレンジするとよいでしょう。日常生活では「なぜ?」と思うことを「考え」「調べ」「実験」することも理科系の知識や思考をみにつけることができます。


そして、この習慣をつけるには指導者や保護者の対応も大切です。思考力を育てようとするなら決しておこなってはいけないことがあります。それは、「答えや解き方をすぐに教えてしまうこと」「できたときだけ大げさに喜んでしまうこと」です。これらをしてしまうと、子どもの考える習慣の弊害になってしまいます。せっかく子どもが考えているのに、「どこがわからない?こうすればいいよ」などと正しい道をすぐに教えるのは感心しません。また、出来たことだけをほめるのでは、できる問題ばかりやりたがるようになってしまう恐れがあります。何度間違えてもチャレンジしている姿、わからなくても悩んで自分で解決しようとしている姿があればそこを大げさにほめてあげてください。これは勉強に限らずに、遊びでもスポーツでも結果は2番、頑張って何度もチャレンジすることが1番とするメッセージを伝えてあげましょう。結果は笑顔であっさりとほめるくらいでも十分です。

最後に、どんな分野でも得手不得手はどうしてもあります。現段階で数学が苦手な子どもには欲張らずに問題を取捨選択することもまた大切です。まずは、小さな成功体験を目指して焦らずにじっくりと取り組むことが苦手意識克服につながるでしょう。