第7回 中学受験で気を付けるべきこと【中学受験③】

 中学受験を検討される保護者の方は近年少しずつ増えているようです。中学受験を経験し、最後までやり抜いた子どもは驚くほど鍛えられ、また、進学先の中学校でもよい環境で中・高を過ごすことができます。一方で、すべての子どもに広くすすめられるというわけではありません。上位の中学校を目指すなら授業時間、宿題、通塾回数、問題の難度、など今までよりも厳しい環境に適応できる一定の適正が必要になります。今回は、中学受験のデメリットとその対策についてまとめていきます。

● 相当な時間を費やす
● 点数と偏差値に一喜一憂する
● 自己肯定感に影響する場合もある

相当な時間を費やす

 一般的に小6になると中学受験コースでは週3回で授業時間は12時間以上になります。さらに週3回の宿題が出ますので、授業の合間の曜日には家で2~3時間の宿題時間になります。苦手な教科や苦手な単元ではさらに時間がかかるでしょう。また、学校から帰ってすぐに塾に行き、塾を出る時間も21時を過ぎますので、家に帰ったら22時近くになることもあるでしょう。そこから学校の宿題、お風呂などを済ませて明日の準備をして・・・となると寝る時間も遅くなってしまいます。中学受験は相当な時間を取られているのがお分かりになるかと思います。

 本来なら、塾で習ったことを復習をして自分でじっくりと咀嚼する時間が必要なのに、なかなかその時間も取れず、宿題に追われてしまう。そうならないように、しっかりとスケジュールを組んで勉強習慣をつけることが大切になります。

 時間を費やすことの対策は、まずは保護者がスケジュール作成についてしっかりフォローすることが1番です。まだ小学生の間はなかなか自分で時間を管理するのは難しいので、スケジュールを一緒に作成し、それを運用できるようにフォローしてあげてください。
なお、当塾の受験コースは早く始めて、早く終わる、という授業時間ですので遅くとも20:30までには授業が終わります。夕飯も家に帰って食べていただいています。小4の間は木曜日は18:30まで、土曜日は16:00に終わります。ご家庭と受験生の生活リズムを整えやすくしています。

点数と偏差値に一喜一憂する

 点数や偏差値に振り回されるのは何も中学受験だけではないですが、まだ小学生のうちから毎月のように結果が出てくると、まるでその数字の良し悪しが自分の価値であるかのような気持ちになるものです。そして、子ども自身が気にするのに輪をかけて、保護者もその数字に振り回されてしまいがちです。保護者が気にしているのは子どもにダイレクトに伝わってしまいますので、さらに振り回されることにります。

 点数と偏差値に一喜一憂することの対策は保護者が普段通りに子どもと接することです。点数が悪くてもそんなに気にせずに(ふりをして)、子どもの思っていることを聞き出しましょう。そして次の対策へとつなげることです。また、中学受験というくくりを外して子どもを見てあげてください。学校の勉強も塾の勉強も毎日頑張っていて(親からみると物足りない量と感じても)、一般的な小学生に比べると、鍛えられいろいろなことができるようになっているはずです。そこをしっかりと評価してあげることが数字にとらわれすぎないことへの一番の対策になるでしょう。

自己肯定感に影響する場合もある

 中学受験にチャレンジするほとんどの子供たちは、学校のクラスでは優秀で勉強にさほど困ったことがありません。つまり、自分にそれなりに自信をもって塾に入るわけですが、多くの場合は学校ほど点数が取れない、できない問題が当り前にある、という壁にぶち当たります。そんな難しい問題も解いてしまうクラスメイトもいたり、常に自分の上を行くクラスメイトがいたり、大小ありますが挫折を味わうことになります。

 また、入試についても第1志望に合格できる子どもばかりではありません。不合格になった子どもたちは大きな挫折感を持ちながら他の学校に通うことになります。そういった大きな挫折は自信を失い、自己肯定感にも影響を与えるかもしれません。しかし、挫折は誰しもが経験することで、それをバネにしてさらなる成長の糧になるものでもあります。スポーツでも試合に負けたり、自分よりも上手なプレーヤーを見て、負けたくない!という気持ちのおかげでさらに強くなれたという話はよく聞きます。

 自己肯定感に影響することの対策は保護者が必死になりすぎないことです。勉強を必死に見てしまったり、他の子どもと比べてしまったり、否定語が多くなってしまうと子どもはどんどん自信をなくしてしまいます。ただでさえ、厳しい環境にいる子どもにとっては、家庭は安心できる場所であることが大切です。二宮尊徳(金次郎)の言葉に「可愛くば、五つ数えて三つほめ、二つしかってよき人とせよ」とうものがあります。しかるよりもほめる割合を多くせよとの格言ですが、中学受験においては、「四つほめて、一つしかる」くらいの感覚が良いです。またしかる内容も、他の子どもと比べたり、点数がよくないことや子供の存在そのものに関することなどは控えてください。

大切なことは〈承認〉〈関心〉〈感謝〉〈安心〉〈指摘〉です。

〈承認〉「いいね」「すごいね」「さすがだね」
〈関心〉「なるほどね」「知らなかった」「どうやってやったの?」
〈感謝〉「ありがとう」「嬉しいな」「助かった」
〈安心〉「大丈夫」「次どうするか一緒に考えてみよう」
〈指摘〉「(○○)らしくないね」「そこは私だったらこうするかな」

 保護者は徹底的に応援する立場であり続けましょう。保護者のサポートと忍耐によって子どもは自己肯定感を失わずに、目の前の試練に立ち向かうことができます。そして、少しの成功を得たときはこれでもか!というくらいにそれまでの努力や取り組みをほめましょう。子どもが照れ臭い表情になったら成功です。自分は認められたんだという気持ちが、自己肯定感を高め、次の成功を目指すことに繋がります。

 中学受験で気を付けたいことで一番大切なことは、最後には保護者が見極めてあげることです。楽しそうに塾に通っていたり、淡々と勉強をこなせているのであれば問題ありません。一方で、いつもつらそうな表情を浮かべていたり、生活面や精神面でおかしいなと思うことが出てきたら、中学受験を見直すことも考えてください。勉強して進学することは子どもが自分らしい人生を送ることの中の過程であり、手段です。小学校で受験勉強をするというのは特別なことですので、いろいろな選択肢をもう一度見直してみることもまた大切だと考えます。

受験に向いているかどうかは、実際にはやってみないとわからない場合が多いです。中学受験は大変なことには違いありませんが、小学校では習えないことを習えて生き生きとして通う生徒も多いです。そういった子供たちにとっては、中学受験は親ができる子供への最大のプレゼントともいえるのです。